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NHK Eテレ『バリバラ』の『バリコレ』に出演しました。(論難編)

 こんにちは大山結子です。

 2016年10月10日(祝)、NHK番組『バリバラ』主催の一大ショー『バリコレ』に、当事者モデルとして出演させていただきました。六本木ヒルズのアリーナと呼ばれる屋外ステージにて開催されたその演目は「ファッションショー」です。
 ショーのレベルや意義の素晴らしさ、発表されたデザイン、作品達のクオリティ、出演させていただいて得たもの達がどれも珠玉であるのは、私が今さら言及するまでもありません。すでに大勢の目撃者が各々に表明しています。ですから「私しか言わなそう」な論難をすることにしました。

 まず、私は「様々な障がいの当事者女性向けのファッション誌」である『Co-CoLife女子部』様(いつもお世話になっております)から出演のチャンスをいただいたことを記します。大変にありがたく、心より感謝しております。また、今後も末長くよろしくお願い致します。
 そんな、私が大好きな『Co-CoLife女子部』が、この一大イベントの為に制作、発表したアイコン(バナー)を引用させていただきます。

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 端的に「ダサピンク現象」でしょう。
 補足します。『バリコレ』のための『Co-CoLife女子部』衣装のコンセプトは赤と星で、テーマは「星より光り輝く女の子たち」。どこにもマゼンタピンクをメインカラーにする必然性はありません。今まで『Co-CoLife女子部』がロゴや紙面デザインの一部にピンク色を用いることはよくありましたが、決して露悪的ではない効果的な使い方でした。ところが今回のアイコンの色彩には杜撰さが透けて見えます。そもそも「女性とは」「障がい者とは」そのあり方や捉え方の根本、無意識的な部分に刷り込まれたイメージの改新こそを問うている今この瞬間、まさにその中央に位置しながら実践を繰り返す最中の、実に肝要な存在が、観客にステレオタイプな印象を抱かせてしまうのは下策です。そもそも「女性のキレイ」を重要視する媒体が自ら「ダサピンク現象」そのままでメッセージを発信するのは本末転倒しています。『Co-CoLife女子部』が全体的に高いクオリティを保ち続けるファッション誌であるだけに、画竜点睛を欠いて、勿体ない。

 次に、何より重要なことを記します。様々に異なる障がいと共にある当事者モデルを20名も集めた、最大の『バリコレ』出場集団である『Co-CoLife女子部』チームへの、NHKからの依頼が、集団で同じ動作を行うタイプのダンスだったことです。これは非常に問題です。なぜならそういったパフォーマンスは画一的な表象だからです。
 NHK『バリバラ』のビジュアルイラストに記されたコピーは「みんな違って、みんないい」であり、イベントの主張は「障がいは個性だ」ですから、それを趣旨とし、障がい=個性の持ち主を集めた上で、マスゲームを要求するのは不適切です。
 20名の個性を、具体例を挙げながらほんの少しだけ説明しましょう。では視覚障がいから。得意なのは聴覚や触覚などをいかした仕事で、NHKが支度したプロの振付師によるダンスの見本を目の前で披露されても、目視はできません。事前にダンスの先生による指導がありましたが、目撃した実例をあげれば、先生が「両手で"8"の字を描きながら大きく!」と言いつつ自ら踊っても、彼女達がその内容を知るには、とても時間がかかりました。情報さえ伝われば、白杖を持っていないほうの手で、その振り付けをすぐ踊ることができます。けれど現場では、どうすれば伝わるか、なかなかわかりませんでした。試行錯誤の結果、ダンス指導の先生が彼女達を屈ませて両手を床に触らせた状態で、その手を取りながら床に「大きな"8"の字」を描く動作を繰り返すことで情報伝達に成功しました。
 そして聴覚障がい。人によるとはいえ、音楽を耳で確認するのには向いていません。ではどうやって指定された曲のリズムやメロディと、自ら身体を動かすタイミングを合致させるのでしょうか。結果は不可能でした。常に見える位置に、音楽を聴くことができる者(ダンスの先生)が存在し、カンニングペーパーのように動作するタイミングを視覚で伝えていたのです。本番ステージでも、打ち上げでも、踊る時は客席の後方などに先生が忍び、そうやってやり過ごしました。聴覚障がいと共にある彼女達に、そうではない人のフリをさせていた形になります。創意工夫の良さは別として、これでは聴覚障がいと共にある状態を魅力的な個性として表現できていないことが問題なのです。障がいは個性であるという主張がこういった按配では表面的でしょう。
 様々な障がいを個性とする彼女達のそれを、大なり小なり否定する事態は、他にも散見されました。

 『Co-CoLife女子部』チームが提示した衣装はリアルクローズでした。そしてプロデューサーから聞けば、当初はそれを「派手派手しさがない」とNHKから否定されたそうです。もしかしたら、そういった要素も相まって、イベントを盛り上げるために、派手な楽曲を会場に大音量で流して観客を興奮させる演出が必要になったのかもしれません。だから音楽が疑問視されにくい「ダンス」という手法を選んだのなら、その狙いだけは成功でした。出場チームの最後に据えられたこのチームによるマスゲームは、会場に集まった観客の多くを強く興奮させ、イベントを大団円へと導いたのですから。この点ではショーは大成功ですが、趣旨に照らせば、観客に知らせるべき最重要情報は笑顔のマスゲームではないことも自明です。
 ごく当たり前にできる・できないの内容が全く異なる20人に、なるべく同じように見える全身運動をしてもらうにあたって、現場はひどく頭を悩ませました。『Co-CoLife女子部』編集部は、NHKからのこのお願いを聞いた時「そんなことできるわけがない」と思ったそうです。ですが現場のスタッフも、出演する当事者モデルも、モデルの介助人も、前述の「工夫」も含めた大変な努力と苦労をすることで、その困難を乗り越え、お願いされたことを達成させました。ところが、そういった努力と苦労はそもそもやらなくていいはずなのです、もし「障がいは個性だ」と肯定しているのであれば。つまり、得手不得手がバラバラな集団にマスゲームを強いる発想の中に、障がい=個性への否定が潜んでいること。
 そのパフォーマンスが意味するものは「障がい者を特別視しない」という、最終目的へ繋がるメタ・メッセージと読み取ることも可能かもしれません。けれど否定的障害者観が蔓延しきっている現状では、多くの観客が受け取る印象は「障がい者“だって”ダンス」つまり障がい者を劣った存在と見傚すことを前提としながら「でも、工夫と努力をすれば、まるで”障り”や”害”がないかのように振る舞える」という次元を超えることはできないのです。そう、障がい者へのマイナスイメージはまだ。
 ショーそのものは既に開催されましたが、その様子は、舞台裏やメイキングを混じえた形で、あらためてNHKより放送されるとのこと。表舞台の営業スマイルも重要ですが、この社会の現状で最も強調すべき、痒いところに手を届かせる思考への改革を、取るに足らないネタとしてだけ消費されるべきではないエッセンスを、的確に抽出して全国、全世界へ発射できるよう願います。
 これからもNHKの本気を観せてください。

2016年10月23日(日)⭐︎大山結子⭐︎

NHK Eテレの番組『バリバラ』。
その一大ショー『バリコレ』に、20名もの当事者モデルから成る最大チーム『Co-CoLife女子部』から、大山結子が出演しました。
11/6(日) 19:00-前編 (11/10(木) 24:00から再放送)と
11/13(日) 19:00-後編 (11/17(木) 24:00から再放送)
ショーの舞台裏も。

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PS.思いっきりワイワイ楽しみつつ、うんと頑張りました。本当に全員が全力で、できることを分担しあいながら工夫を重ねるという、優しくも知的な、しかも貴重な気づきに溢れる素晴らしい場所でした。きっと来年も開催される『バリコレ』に、こっそりちゃっかり、また参加させていただきたいと、強く願っております。
 このイベントに参加させていただいて、嬉しくて楽しかった思い出だけをひたすら報告するレポートを、忘れた頃にUPします。